Vectrexベクタースキャン方式ゲームの歴史 VECTOR ASSAULT
ベクタースキャン方式のゲームは、1970年代から1980年代前半にかけてアーケードを中心に発展しました。その中でも特筆すべき家庭用ベクターゲーム機「ベクトレックス(Vectrex)」が登場し、短命ながらもゲーム史に残る存在となりました。本記事では、ベクトレックスの歴史も含め、ベクタースキャンゲームの進化を詳しく解説します。
ベクタースキャン方式とは?
ラスター方式との違い
ベクタースキャン方式
画面上の点と点を直線で結び、オシロスコープのような描画を行う方式。
解像度が高く、滑らかなラインを描くことが可能。
当時のラスター方式に比べ、精密な表現が可能だったが、カラー表示が難しく、単色が主流。
ラスター方式(現在の一般的なディスプレイ)
ピクセルの集合体で画面を表現する方式。
1980年代以降のゲーム機・PCはほぼラスター方式を採用。
ベクタースキャン方式ゲームの歴史
1970年代:ベクターゲームの誕生
1973年 – 世界初のベクターゲーム『Space Wars』
『Space Wars』(シネマトロニクス社)
MITのPDP-1コンピューター上で動作していた**『Spacewar!』(1962年)**をアーケード化。
2人対戦型の宇宙戦闘ゲームで、オシロスコープを利用したベクター描画が特徴的。
1977年 – アタリの名作『Lunar Lander』
『Lunar Lander』(アタリ)
月面着陸を目指すゲームで、燃料を調整しながら安全に着陸させる。
後のシミュレーションゲームの先駆けとなる。
1980年代前半:黄金期
1979年 – 『Asteroids』の大ヒット
『Asteroids』(アタリ)
小惑星を破壊しながら生き残るシューティングゲームで、ベクターゲーム史上最大のヒット作。
精密な動きと物理演算的な挙動が特徴。
1980年 – 3D視点の戦車ゲーム『Battlezone』
『Battlezone』(アタリ)
初の3Dベクター戦車シューティングゲーム。
プレイヤーは戦車の視点で敵戦車を撃破する。
米軍の訓練プログラムにも影響を与えた。
1981年 – カラー版ベクターゲーム登場
『Tempest』(アタリ)
初のカラー・ベクターゲームのひとつで、3D視点のシューティングゲーム。
後のFPSゲームに影響を与える。
『Star Castle』(シネマトロニクス)
敵基地の回転する防御シールドを破壊する戦略的シューティングゲーム。
1983年 – 『Star Wars』
『Star Wars』(アタリ)
映画『スター・ウォーズ』を題材にした3Dシューティングゲーム。
Xウィングを操作し、デス・スターを攻撃する。
カラー・ベクターグラフィックを採用し、当時の最先端技術を駆使。
1982年 – 家庭用ベクターゲーム機「ベクトレックス」の登場
ベクトレックス(Vectrex)とは?
1982年に**GCE(General Consumer Electronics)**社が発売(後にMilton Bradley社が買収)。
唯一の家庭用ベクターグラフィックスゲーム機。
9インチのモノクロCRTディスプレイを内蔵し、テレビ不要。
カラー表現はできないが、**プラスチック製のカラーフィルター(オーバーレイ)**を使って色を疑似的に再現。
代表的なベクトレックスのゲーム
発売年 | ゲーム名 | 特徴 |
1982 | Mine Storm | 『Asteroids』風のシューティングゲーム(本体に内蔵) |
1982 | Armor Attack | タンクを操作する戦略シューティング |
1982 | Scramble | 横スクロール型シューティング(アーケード移植) |
1983 | Star Castle | 敵基地を攻撃するシューティング |
1983 | Space Wars | 2人対戦の宇宙戦闘ゲーム |
ベクトレックスの衰退
1983年の**ビデオゲーム業界の崩壊(ビデオゲーム・クラッシュ)**の影響で売上が低迷。
1984年には製造中止となる。
しかし、そのユニークな技術とデザインから、コレクターズアイテムとして高い評価を受け続けている。
1980年代半ば – ベクターゲームの衰退
ラスター方式の技術向上により、ベクター方式の優位性が薄れる。
ベクターゲームは製造コストが高く、故障率も高かったため、メーカーはラスター方式へ移行。
1985年頃には、ほぼすべてのアーケードゲームがラスター方式に。
ベクターゲームの影響
3Dゲームの先駆け
『Tempest』や『Star Wars』は、後の3Dポリゴンゲームの基礎を築いた。
FPSゲームの原点
『Battlezone』は、後のDOOMやQuakeなどのFPSの祖先といわれる。
インディーゲームシーンでの復活
近年、『Asteroids』風のゲームがインディーシーンで登場し、ベクターグラフィックのレトロな美しさが再評価されている。
まとめ
ベクタースキャン方式のゲームは、1970年代後半から1980年代前半にかけて、アーケードと家庭用ゲーム機(ベクトレックス)で進化を遂げました。しかし、ラスター方式の進化とコストの問題から短命に終わりました。それでも、滑らかなラインや独特のグラフィック表現は、現在の3Dゲームやレトロゲームファンの間で根強い人気を持ち続けています。
ベクトレックスは、短命ながらも唯一の家庭用ベクターゲーム機として、今なおコレクターに愛される存在です。
筆者もべクトレックスを最大3台所有していました。筐体がまず可愛くて、コントローラー、ソフト、スクリーンに付けるカラーフィルムのセットで大切にしていました。懐かしさを込めてミニゲームで再現 (VECTOR ASSAULT)しましたのでどうぞ。
筆者
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